若手監督4人が川端康成の同名短編集「掌の小説」から4編を取り上げ、
「桜」を共通テーマにしてオムニバス形式で綴る文学ドラマ。
繊細で美しく、フェティシズムあふれる川端康成の文学の世界観を、
香椎由宇、吹越満、奥村公延、福士誠治など多彩のキャストで描きだす。
【笑わぬ男】
路地裏のアパートにある若い夫婦が暮らしていた。夫は売れない作家。
病の床に臥している妻は自分の死期が近いと感じているのか夜毎
「足が淋しい」と呟きその細くなった白い足を擦らせていた。
「桜が見たい」という妻のために男は桜が咲き誇る裏山へと向かう。
【有難う】
私婦として生きている菊子は毎晩違う男と枕を並べながら、いつも故郷で
出会った、今はもう逢う事の無いある青年の事を思いかえす。
青年は、乗り合いのバスの運転手で、(ありがとさん)と呼ばれている
青年だった。道すがら、バスの中から馬車にも大八車にも馬にでも
「ありがとう」と声をかける(ありがとさん)。菊子はまだ幼い時分、
この(ありがとさん)のバスに揺られ町へ売られて来たのだった。
ちょうど、桜の咲き誇る季節に。
【日本人アンナ】
ある寒い日、ロシア人の少女・アンナに財布を掏られてしまう。
アンナは毎晩街の映画館でロシアの歌を歌っている。
可憐なアンナに魅せられた私は、彼女の暮らす木賃宿をつきとめ、
隣の部屋へ通い夜な夜な襖の奥からアンナの姿を覗いていた。
そんな夜が幾日か続いたある朝、アンナは町から忽然と姿を消す。
翌年の春、満開の桜の下でアンナに良く似た美しい少女と出会い…
【不死】
来る日も来る日も同じ木の下で凧をあげ続ける新太郎。
ある日街の雑踏の中に今は亡きかつての恋人・みさ子の姿を見つける。
二人は手を取り合い桜の木へと向かい歩き始める。
そこはかつてみさ子が亡くなった場所だった。
ようやく恋人に再会することが出来た新太郎は、満開の桜の木の下で凧を
あげる。
(各エピソードのあらすじは公式HPより抜粋)